神戸市内には約800棟の茅葺民家が残存し、その約8割は茅葺屋根に金属被覆(以下、「金属葺」)をしたものです。
神戸市都市景観審議会より受けた答申「歴史的建築物の保全活用の方針について」(平成30年1月)においても、「茅葺、金属葺に関わらず高い文化的・歴史的価値を有するものとして評価を行う必要がある。」と金属葺についても茅葺同様に保全活用を図る必要があると評価されています。
そこで当法人では神戸市より委託を受け、金属葺民家の保全活用に必要な支援策を検討するための基礎調査を行いました。
金属葺の茅葺屋根は、どのようにして金属で覆われているのか?そのほとんどが職人頼みの施工で行われているため、その工事の概要、手順などの工程・実態をテーマにした研究は行われておらず、文献も見当たりません。
そこで当法人では草葺屋根に金属葺を行った所有者にヒアリングを実施し、貴重な当時の記録・写真等の提供を受け、実態を整理し、維持管理の適切な方法を提案致しました。
金属葺の茅葺屋根には実に多彩なデザインが見られます。そのほとんどは定式化されているものではなく、所有者の思いや職人の感性を反映したひとつひとつに個性のある屋根の風景が見られます。
これまで神戸市においては草葺きの茅葺民家に対して景観資源(旧景観形成重要建築物)の指定や文化財への指定や登録などを行い支援が行われてきましたが、このたび農村景観の重要な要素として金属葺の茅葺民家にもスポットを当て、支援を検討することは大きな前進となることでしょう。
金属葺茅葺屋根も草葺屋根同様に維持管理が必要です。本件では適切な維持管理が行えるよう、50年間に及ぶ長期維持管理費のシミュレーションにも取り組みました。
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