神戸市東部に建つ旧I家住宅について、国有形登録文化財への登録を目的として、調査および図面、評価書等の作成を行いました。
当該住宅は洋館、和館、茶室等からなる和洋館並置型の昭和初期に建てられた近代住宅です。
洋館にはステンドグラスや扉、照明器具に至るまでアールデコ様式を取り入れたデザインが随所に見られ、当時の姿がそのまま残されています。
円弧を描く外壁、庇、笠木などには特別に焼かれたボーダータイルが貼られ、玄関ポーチは凝灰岩にレリーフが施されるなど、ディテールに至るまで緻密に設計されています。
小屋裏調査により上棟時の御幣を発見しました。昭和6年に上棟された建築であることが判明しました。
I家住宅の建つ界隈はかつて近代住宅が建ち並ぶ地区でしたが、近年はそれらのほとんどが解体され、歴史的な貴重な建築物はI家を含め数軒しか残されておりません。そのような背景のなかI家住宅は、国土の歴史的景観に寄与し、当時の造形の規範ともなっており、再現することが容易でない唯一無二の価値があると評価し、国登録有形文化財への申請を進めています。
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