神戸市より「茅葺民家の管理計画作成のための調査及び資料作成業務」の委託を受けて、神戸市大沢町に建つ茅葺民家I家住宅の実測および調査を行いました。
現所有者とのヒアリングやI家に残された資料により、茅葺屋根の主屋だけなく付属屋を含めて、I家住宅が建築され現在に至るまでの歴史的な背景・経緯を調査し、歴史的・景観的な価値を評価し、将来にわたって保全活用していくべき建築であることを明らかにしました。
茅葺屋根は平入・入母屋形式で、棟部は竹で組まれたからすおどしと置き千木で構成され、小屋組みは叉首組で屋中、垂木、竹木舞下地が整然と細かく丁寧に組まれている。主屋は玄関土間の左手に四つ間を設けた典型的な茅葺民家の造りとなっている。
明治初期に建築された茅葺屋根の主屋を中心に衣装蔵、味噌蔵などの複数の土蔵群や付属屋、離れからなる中規模農家の屋敷構えを見せており、門や塀で囲まれた前栽を有し、建築当時からの茅葺屋根を守り続け、周囲の田園と一体となった茅葺農家の風景は、茅葺民家が残る大沢町にあっても貴重であり、周辺地区の歴史的な景観資源の一つとして、国登録文化財や神戸市景観形成重要建築物等の指定も視野に入れながら、将来にわたって茅葺民家を守り続けられるように、茅葺屋根の長期維持管理計画もあわせて作成しました。
I家住宅は、2020年9月1日、神戸市景観形成重要建築物等に指定されました。
平入・入母屋形式の茅葺屋根主屋。定期的に差し茅が行われて、非常に良い状態で保全されています。
竹で組まれた置千木とからすおどし。青空を背景に茅葺屋根が映えます。
小屋組みは垂木・屋中・竹木舞下地が整然と組まれており、丁寧な仕事が伝わってきます。
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