神戸市より「茅葺民家の管理計画作成のための調査及び資料作成業務」の委託を受け、神戸市山田町に建つ茅葺民家T家住宅の実測・調査を行いました。
現所有者とのヒアリングやT家に残された資料により、茅葺屋根の主屋だけなく付属屋を含めて、T家住宅が建築され現在に至るまでの歴史的な背景・経緯を調査し、歴史的・景観的な価値を評価し、将来にわたって保全活用していくべき建築であることを明らかにしました。
茅葺屋根は平入・入母屋形式で、棟部は9つの針目覆いと竹のからすおどしで構成されています。小屋組みは叉首組で屋中、垂木には丸太が使われ、竹木舞下地が整然と細かく丁寧に組まれている。主屋カミノマにはL字形に床の間と床脇が誂えられ、また床の間の裏には来客用の厠も設けられて格調の高さを窺わせる造りとなっています。
建築年代は特定出来なかったものの、茅葺屋根の主屋の背後にはコの字を描くように、衣装蔵、米蔵、味噌蔵などの土蔵群や隠居、付属屋が建ち並び、板塀で囲まれた前栽を有する造りは中規模農家の屋敷構えを呈しており、建築当時からの茅葺屋根を守り続け、背後の山や山田川沿いの列村集落の風景と一体となった茅葺農家の佇まいは、茅葺民家が残る山田町にあっても貴重であり、周辺地区の歴史的な景観資源の一つとして、国有形登録文化財や神戸市景観形成重要建築物等の指定も視野に入れながら、将来にわたって守り続けられることを願っています。
手入れされた庭木の植栽、背後の山と一体となった風景が保全されています。
9つの針目覆いと竹のからすおどしで棟部が構成されています。
茅葺屋根は四方に瓦葺下屋根が廻り、増築等によるいびつな切り上げもなく、どっしりと整然とした姿を見せている。
茅葺屋根の小屋裏。叉首、垂木、屋中には丸太が使われている。竹木舞下地は仕事が丁寧で、整然と細かく組まれている。
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