神戸市より「茅葺民家の長期維持管理計画作成業務」の委託を受け、茅葺民家を維持管理していく上で必要となる、屋根の定期的な修繕、それに伴う材料や資金の調達、日常的なメンテナンスなどの配慮事項について、専門家へのヒアリングや実例調査を行い、茅葺屋根の長期維持管理計画を作成しました。
神戸市には地域の文化や歴史を伝える70~80棟の茅葺民家が残されており、当法人では神戸市の各担当部署や茅葺専門職人、またその所有者の方々と協力し、その保全活用に長年にわたり取組んでいます。
茅葺民家は人々の生活や暮らしと密接な関係を持ち、世代交代や地域に根ざした茅葺職人により100年以上に渡り守られてきましたが、社会情勢等の変化により茅葺民家を取り巻く環境も変化し、茅葺屋根の維持・管理の負担の大きさや現代生活にそぐわない住環境により、滅失する事例も少なくない。
また現在、茅葺民家に住んでおられる所有者でさえも、葺き替え工事等を経験されていない方が多く、茅場の減少や農村コミュニティの希薄化によって、茅の刈り取りや運搬、葺き替え工事に至るまで、茅葺屋根に関わる場面がほとんど無くなり、茅葺屋根への関心が薄らいできていることに危機感を感じざるを得ない状況にあります。
そこで当法人では主に茅葺民家の所有者の目線に立ち、まず茅葺屋根とはどういうものかを知って頂き、茅葺屋根の劣化状況のチェックポイントを分かりやすく示すことで所有者自ら屋根の診断が出来るようにしました。さらに長期にわたって差し茅や葺き替え工事のタイミングと資金計画を示すことにより、安心していつまでも茅葺民家に住み続けられるよう、長期維持管理計画を作成しました。
茅葺屋根の概要から維持管理のポイント、所有者や茅葺職人へのヒアリング、茅葺民家の実例を用いたケーススタディおよび長期維持管理計画の作成など多岐に渡る内容となっています。
茅葺民家の所有者の方が維持管理で困っていることに対して、分かりやすく、簡単に実践できるような内容となっていますので、ぜひ活用して頂ければと考えています。
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