H家住宅 調査・資料作成

神戸市より「歴史的建築物にかかる管理計画等作成業務」の委託を受け、西須摩地区に建つ近代住宅H家住宅の調査および資料作成を行いました。

「ひょうごの近代住宅100選」にも選定されているH家住宅は、近代住宅が建ち並んだ淡路島から大阪湾を一望することが出来る高台に位置し、真っ白な洋館と庭を囲むようにL形に配置された和館が並んで建つ、近代住宅様式の一つである「和洋館並置型」の住宅です。

今回、所有者とのヒアリングやH家に残された資料等の調査によって、H家住宅は明治40年頃に建築された、西須摩地区に現存する近代建築の中でも最古級の建築物であることが判明しました。

前面道路に面する洋館はベランダのあるコロニアル様式で、2階洋室からはベランダ越しに大阪湾が一望出来る造りとなっている。コロニアル様式の多くの近代住宅が、建築後に寒さを凌ぐためにベランダをガラス等で囲っている例が多い中で、H家住宅は建築当時からその姿を変えていない稀有な事例です。

明治末期に建てられた貴重な建築物で、緑豊かな庭とともに良好な景観を呈しており、今後も歴史的な景観資源のひとつとして、国登録文化財や神戸市景観形成重要建築物等の指定も視野に入れながら、将来にわたって維持保全が出来るように、老朽部位の調査と今後の改修方針もあわせて作成しました。

H家住宅は、2020年9月1日、神戸市景観形成重要建築物等に指定されました。

前面道路に面して建つ真っ白な洋館は地域の景観のシンボル的な存在となっています。

古典的なオーダーを模した柱・梁で支えられたバルコニーからは遠くに大阪湾を望むことが出来ます。

洋館の1階は応接間となっており、来訪者は直接この部屋に入ることが出来ます。

土蔵から見つかった餅箱です。上棟時に使用されたものと考えられ、箱には「明治四拾年拾弐月」の墨書があります。

座敷天井裏から見つかった御幣です。所有者から洋館や和館主屋が建てられた約10年後にこの座敷部分が建てられたというお話を伺っていましたが、御幣には「大正四年六月八日」の墨書があり、明治40年建築の洋館から約8年後に建てられたものと判明しました。

所有者からのお話を裏付けるような物が次々と確認することが出来たため、H家住宅の洋館と和館主屋は明治40年頃に建てられた、西須摩地区に現存する最古級の建築物であると特定しました。

NPO法人ひょうごヘリテージ機構H²O神戸

歴史文化遺産の発掘・保存・活用に関する活動を行う 特定非営利活動法人(NPO法人)ひょうごヘリテージ機構H2O神戸 (エイチ・ツー・オー・コウベ)です。 文化財建造物、近代建築、茅葺民家、など伝統的建築物の保全、管理、活用などを支援し、建築物にとどまらず、地域、コミュニティ、風景の維持、活用を提案させて頂きます。

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