N家住宅(旧坂家住宅) 国登録有形文化財申請

019年神戸市景観形成重要建築物等に指定されたN家住宅について、国登録有形文化財に申請しました。

N家住宅は大正11年頃、再度山へと繋がる神戸の街を南に見下ろす高台に、川崎造船所で専務を務めた坂湛によって建築されています。

東側に平屋建ての洋館、西側に2階建ての和館が並んで建ち、洋館はフラットな陸屋根形式のシンプルな姿である一方で、和館は入母屋形式の瓦葺き屋根、銅板一文字葺きの裳階や庇が重層し、階高も高く山を背景に豪壮な姿を呈しており、外観の異なる和洋館の棟が異質のまま隣り合って建てられた和洋館並置型の佇まいとなっています。一方内部では、明治末期から大正・昭和期へと徐々に進んでいく和洋折衷化の流れを反映した空間造りも行われていました。

洋館の外壁は腰部分に鉄平石が、その上部は淡い白色を基調とした小口タイルが貼られた装飾性の少ない壁面となっており、そこに縦長の開口部が穿たれ、最上部には壁面から突出した擬石風仕上げの軒が設けられ、水平垂直のラインが強調された外観を呈しています。

外部開口部の欄間には波や船、鷗などをモチーフにしたステンドグラスが嵌め込まれていますが、その製作者については、明治末期から大正、昭和にかけて活躍した木内真太郎である可能性が極めて高いと指摘されています。

多くの政財界人が邸宅を構えた再度筋町から諏訪山町にかけての界隈は、神戸の近代化を語る上で歴史的、景観的にも非常に重要な地区であり、多くの近代建築が失われゆく中でN家住宅はその邸宅建築の一つとして当時のままの姿を留め、山の手に残る貴重な住宅建築として、神戸の歴史的景観に寄与しています。また和洋館並置型の佇まいは、明治から大正期にかけて建築された邸宅建築の一つの典型的な様式であり、豪壮な佇まいと格調高い造り、自然をモチーフにしたステンドグラス、それらが見事に融合して生み出す空間からは優雅な暮らしを想起させ、近代神戸の発展に欠かせない川崎造船所の造機分野に大きく貢献した人物ならではの風光明媚な邸宅、それが現代まで保持されているN家住宅は再現することが容易でない唯一無二の価値があると判断し、国登録有形文化財に申請しました。

N家住宅(旧坂家住宅)は、2020年3月19日に開催された文化審議会文化財分科会の審議・議決を経て、建造物を登録するよう文部科学大臣に答申されています。この結果、官報告示を経て、登録有形文化財となる予定です。

煉瓦造の洋館と重層する屋根を持つ木造の和館が並んだ和洋館並置型の邸宅建築で、当時の姿をそのままとどめています。

貴重なステンドグラスを一つ一つ丁寧に調べています。

調査の結果を当法人スタッフで確認しています。当法人は建築士および兵庫県ヘリテージマネージャーの資格を有する専門的な立場から建築物を評価します。

国登録有形文化財への申請にあたり、当法人スタッフが現地にて文化庁担当者へ建築物の歴史的背景やデザインの特徴および総合的な価値などを説明します。

NPO法人ひょうごヘリテージ機構H²O神戸

歴史文化遺産の発掘・保存・活用に関する活動を行う 特定非営利活動法人(NPO法人)ひょうごヘリテージ機構H2O神戸 (エイチ・ツー・オー・コウベ)です。 文化財建造物、近代建築、茅葺民家、など伝統的建築物の保全、管理、活用などを支援し、建築物にとどまらず、地域、コミュニティ、風景の維持、活用を提案させて頂きます。

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